生命体の役割

 生命体の役割は、保護膜の中で赤ちゃんのからだの発育をつかさどっています。赤ちゃんの五感の働きが発達していくこと、そして、起きあがって、立ち上がって、歩いて、走って、睡眠と目覚めと呼吸の正しさを次第に身につけていく、そういう仕事を生命体はつかさどっています。

 生命体の最後の仕上げが、自分の歯をつくること。自分の歯をつくり、必要なくなった親からもらった歯を押し出すのです。ここまでの仕事を成し遂げると、生命体は臨月を迎えて、膜を出て外の世界に独立します。

 独立後は、その姿を少し変えて、シュタイナーがよく使う言葉で「メタモルフォーゼ」します。「メタモルフォーゼ」する、ということは、直線的な伸び方をしない、形を変えて発展する、内容を変えて成長する、という意味です。前のものとはまったく形をかえてしまうけれども、前からの必然的なつながりの上でなされる発展の仕方を、「メタモルフォーゼ」といいます。

 生命体は保護膜を出るとメタモルフォーゼを起こして、今度は記憶力をつかさどるようになります。

 

感情体の役割

 感情というのは、大きく分けると喜、怒、哀、楽の4つの要素がありますが、実際にはそんな単純なものではありません。花火を見て、「きれい」と感動すると同時に、なんとなく悲しい気持ちが心の中にわいてきたりします。4、5歳の子供だと、大まかな喜びとか怒りとかを持っていますが、大人になると、もっと感情が細分化してきます。
 未分化でおおまかな状態にある感情を、豊かで微妙なニュアンスが識別できるように育てていくことが、保護膜の中での感情体の仕事です。

 この仕事が充分におこなわれて、やがて子供は12〜3歳で思春期に入ります。この時期になると、異性に対する感心が出てきますが、これが感情体の臨月です。

 感情体も保護膜を出るとメタモルフォーゼを起こして、次に抽象概念を使って物事を論理的に構築していく力、思考力になります。

 日本の今の教育では、小学校4〜5年生の算数などで、自分から思いつく前に、先生が「記号を使って問題を解けば簡単だよ」と言ってしまい、そう言われるとわかってしまう子供が多いわけですが、シュタイナー学校の先生達は、その時期はまだ思考力の胎動期なのだ、と言っています。小学校4〜5年生くらいでは、抽象的思考は可能になりつつありますが、それはまだ本当の力ではなく、感情体は臨月を迎えていないのです。

 

自我の誕生

 感情体が外へ出てくると、抽象的な思考力がどんどん働きます。でも、まだ自我は膜の中にいます。自我は、判断力を養成しています。すでに外に出てきた、記憶力、思考力、そして体力を総動員しながら、物事を判断していくことを自我はおこなっています。

 判断力にしたがって自分で自分の行動を決断できる状態になった時が、自我の臨月で、そこではじめて自我の独立ということが完成されます。

 その時点までは、子供に社会的責任の伴うような判断をさせてはいけないのです。