ドイツの教育制度

ドイツと日本の教育制度は全然違うのです

「シュタイナー教育」という、特別に名前の付いた教育制度が世界で注目を浴び、”日本とはまったく違う教育制度だ”ということで日本でも注目を浴びています。でも、シュタイナー教育が特別なのではなく、日本が特殊なのだ、ということを考えていただきたいと思います。

 

日本の教育制度

 ます、日本の学校制度について。説明するまでもなく、日本で生まれ、日本で育った人ならば、ほとんどの人が同じ教育制度を思い浮かべるでしょう。

 国公立、私立の違いこそあっても、満6歳で小学校に入学し、6年間の小学校教育を受け、満12歳で中学校に入学、中学は3年間で卒業、満15歳で高校(高専、専門学校含む)に入学、留年・留学した人をのぞけば3年間(高専は5年間)の高校教育を受けて18歳で高校を卒業。その後は就職する人、専門学校へ行く人、浪人する人、大学へ行く人等に分かれます。小学校、中学校で落第して留年ということはありません。高校でも、よっぽどのことがない限り留年することはありません。基本的には12年間で学校教育を終えます。

 日本も昔(戦前)の教育制度は今と違ってドイツに似ていたようですが、戦後、アメリカが作った現在の法律によって、現在のような教育制度になったわけです。

 

授業時間

 親が仕事の都合でドイツへ行くことになり、子供をシュタイナー学校へ入れる機会もあるかもしれません。その場合、授業の時間に驚くかもしれません。

 日本では、午前中授業を受け、給食やお弁当を食べた後、午後も3時過ぎまで授業があります。ところが、シュタイナー学校に入れてみたら、高学年でなければ、午前中(12時や13時)に授業を終えて帰ってくるわけです。そこで、「シュタイナー学校は特別だ」「さすがだ」と思うのは、少し待ってください。ドイツの公立学校と比べてみる必要があります。

 ドイツの小学校、ギムナジウムでも、午前中に授業は終わります。むしろ、シュタイナー学校よりも早く終わるくらいです。だから、シュタイナー学校が特別なわけではないのです。

 

ドイツの教育制度

 シュタイナー学校は1919年に初めてシュトゥットガルトに創設されました。そのシュトゥットガルトがあるのはドイツですから、ドイツの教育制度を見ておきましょう。

ドイツ学校制度の図

注:図のそれぞれの広さ・大きさは人数の割合を示しているわけではありません

 

 日本と根本的に違うところは、小学校が4年制(シュタイナー学校と総合学校を除く)で、10歳で進路が決まる、ということです。
日本のように、とりあえず高校へ行ってそれから大学に行くかどうか考えよう、などというのんきなことは言ってられないわけです。入学する年は日本と同じ6歳なので、10歳(小学校4年生)で、進路を決めなければなりません。

 大学へ行くためには、9年制のギムナジウムへ行くことになります。大学へ行く必要を感じなければ、5年制の中学へ行って義務教育を受けます。もっと勉強したいけど、大学へ行くほどではない場合は、専門技術も学ぶ6年制の中等実科・商科学校へ行くことになります。
これらの進路は基本的には小学校での成績で決まります。ギムナジウムへ行きたくても、一定の学力がなければ、ギムナジウムへは行けないわけです。

 ギムナジウムへ行けない子供達はどうなるのだ、10歳で大学への進路を閉ざされてしまうのはひどいじゃないか!と思う方もいらっしゃるかもしれません。
けど、心配はいりません。ドイツは日本のような学歴偏重社会ではないので、学歴だけで人間を見るということはしません。その人がどのような知識や技術を持っているか、が大切なのです。
だから、職業に繋がる技術を習得する学校が充実しており、大学へ行かずにマイスターを目指す人も多いのです。

ギムナジウム

 ここで分かるように、大学へ行くためには、4年プラス9年で、13年教育を受けることになり、日本より1年長いのです。しかも、小学校ではまれですが、ギムナジウムでは毎年5%から10%(40人のクラスだったら、2人から4人)落第が出ます。だから、ストレートに進級して9年でギムナジウムを卒業できる人というのは、極端に言えば半分くらいしかいないわけです。

 落第、というと、恥と思いがちですが、勉強が分からない生徒を上の学年に上げても、それより難しい勉強をするわけですから、本人が辛いだけでいいことはありません。分からないまま学年が上がっていってアビトゥーアを受けても不合格になるのは分かり切ったことですから、本人も親も、結構あっさりと受けとめるようです。

 

シュタイナー学校

 シュタイナー学校は、小学校と同じく6歳で入学します。それからは12年間(一部、家の職業を継いだりするために12年未満で卒業する人もいる)一貫教育なので、途中で進路を分けられることもなく、落第もないので18歳で卒業します。

 大学へ行くには、シュタイナー学校を卒業した後、1年から2年、シュタイナー学校に付設されているギムナジウムを受検する人のための授業を受けて、アビトゥーアを受けることになります。

 

総合学校

 普通の小学校へ行くと、4年生で進路を決めなければならず、大学へ行くためのギムナジウムに行くために競争を強いられ、ストレスがたまります。でも、シュタイナー学校では一貫教育ののんびりした学校なのにアビトゥーアにはしっかり合格している、これでは普通の学校の子供達がかわいそうだ、と議論が起こり、シュタイナー学校をまねて13年間一貫教育の総合学校ができました。アビトゥーアを受ける資格のある学校で、まだ比較的新しい教育制度です。

 が、ただ一貫教育ということをまねただけで、中身がついていかない、という結果をまねいているようです。

 

アビトゥーア

 たびたび「アビトゥーア」という言葉を出してきましたが、意味がさっぱり分からない方も多いかもしれません。文章から、大学に入るための入学試験のようなもの、ということはなんとなく分かっていただけると思います。

 正確に言うと、このアビトゥーアは、日本で言う大学入試とは性格がまったく異なります。ギムナジウムを終了した後に受ける国家試験で、大学に行くことができる資格(高校卒業資格とは別の資格)です。資格なので、一度合格さえすれば、一生使える資格です。
だから、アビトゥーアを取ったらすぐ大学へ行かなければならない、ということはありません。アビトゥーアを取った後に、何年も放浪の旅に出ても、就職してもいいのです。その後に「学びたい」、と思った時には何才でも大学に入学することができるわけです。

 そうなると、どこの大学に入学できるのか、という疑問がでてくるかもしれませんが、ドイツでは好きな大学の好きな学部に入学することができます。ドイツの大学は、日本のような偏差値によるレベル分けがされていないので、どこかの大学に偏る、ということが起きません。いつどこの大学へ行っても、学部を変えても、途中で違う大学に移ってもいいわけです。

 ただ、最近では人気のある学部では定員制になっていて、医学部等の定員制を設けている学部では、アビトゥーアで何点を取ったか、が問われます。アビトゥーアを持っていても、希望の学部には入学できない、というです。他の点数を問わない学部でも、あまりに人数が増えすぎると、点数は関係なく1学期や2学期、入学を待たされることもあるようです。

 例えば、医学部へ行きたいけど、アビトゥーアの点数が足りなかった場合、もう一度アビトゥーアを受けられるかというと、資格試験なので、受けることはできません。アビトゥーアに合格したら、それは一生ついてまわる点数になるわけです。

 ただ、アビトゥーアは2回までしか受けることができません。2回とも落ちたら、もうアビトゥーアを受ける資格がなくなるわけです。